心 (子転、個殺…)
麻生ゆり
僕の心は寒くって
三日月のように凍ってしまいました
そういえばあの時に見た月に
突き刺さっていたのは何だったっけ?
今の僕には太陽さえも豆電球
猫の光る目の方が輝いてるさ
あき缶の車が転がって
袋の中に落っこった
花びらの先っぽの爪が
歌声を奪っていった
僕だって鳥になりたいよ
「鏡よ 鏡よ 鏡さん
私ってば綺麗ですか?」
「いいえ いつの間にか黒くなってますよ」
朝日届かぬ土の上におりた霜が
うなだれて背を丸めた自分と重なった
もう限界だね
はがされた亀の甲羅
そのひびは産まれつき?
それとも今出来たの?
くしゃくしゃになった制服が
氷室の中に入ってる
でも乾いてるから白いだけ
凍るわけないじゃん
さらさら落ちる砂丘の砂を
ほんのちょっと取ってきて
ガラスの瓢箪にいれておこう
砂時計を作るから
酒が飲みたい酒が飲みたい
踊り子と一緒に酒が飲みたい
霞の中で酒が飲みたい
僕の命数を肴にして
「人は他人のためには泣けないよ
愛する人が死んだ時だって
そのことに悲しむ自分が可愛そうで泣くんだよ」って
誰かが言ってたけど
案外人間なんてそんなものだよ
僕の心は重くって
深く沈んでおりました
空高く飛ぶ翼も
浮上するためのひれも壊れちゃって
地雷探知機を持ってたって
君は救われないよ
鏡を虫眼鏡でのぞいてみても
自分は大きくならないよ
もっと遠くへ
ずっと遠くで
何もかもを麻痺させて
バイバイ