緑と金
木立 悟




遅れて響く真昼の音が
午後をゆらりと追いかける
畏れのかたち
雲に去られた
空のかたち


緑と金が
ひらいては呼ぶ
空の端 地の辺に
呼び覚ます
呼び覚ます 火


蟻のような鳥の群れが
葉と枝から流れ落ちる
落ちては飛び 落ちてはかがやき
手のひらと土と
空に沈む


ずっと ずっと
はばたかなければいけないいのちか
風に現われる水紋に
憩うことは許されないか
横たわるように 羽を休めて


枝の道をかきわけて
最初に触れた光のかたちが
手のひらの水にくちびるをつけ
重なる意匠を飲みほしてゆく
赤子のように飲みほしてゆく


双つの雨が
互いに気づくことなくすれちがう
緑に濡れ 金に濡れ
緑と金は確かめる
変わるもの 変わらぬものを確かめる


しおれかけた花の横で
羽は一度眠りにつく
つぼみが庭のすみを照らし
生まれてはじめて咲こうとしている
唱が近づき 遠のいてゆく


濡れた衣に映る道
やがて草となるいとなみ たましい
空に触れては点す手のひら
髪を梳かし かがやきながら
緑と金を見つめている














自由詩 緑と金 Copyright 木立 悟 2007-06-03 07:14:54
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