八女のさつき
soft_machine


蒼深い川沿いに出来た村は振り向かない
軒先に草の影が乾いて揺れて
ひと足ごとに家一件
山奥へ向かう静かなあゆみ

白藤が一本の赤松を枯らしながら
さわやかな薫りがひろがって始まる
山女の節立った指の中
力持ちの茶摘み子が住んでいる

曲がった腰はやま道の行き来にちょうどよい
篭いっぱいの新茶を背負った
道の途中に捨て子がある
摘み取った命を惜し気もなく降り注ぐ

八女のさつき
山女の茶摘みは音が陽気だ
摘まれた命が鈍く温かい新鮮な反射で
語ることばは
人のことばと
川のことば

高い日差しが目覚める雲間
山の神がくすぐる耳を悦ぶ
茶摘みの永劫
棟揚げの鳴りがのんびりと緑に吸われる叫びを
頂きに住む鳥が微笑みに知る






自由詩 八女のさつき Copyright soft_machine 2007-06-02 22:10:33
notebook Home 戻る