汚れた庭球
服部 剛
森に架かった木の橋に
父は手にしたカメラを構え
木漏れ日と葉陰の揺れる
袂
(
たもと
)
に立つ
妻と娘をレンズ越しに覗いた
シャッターを押した後
肩を並べた三人の後ろ姿は
森の出口に姿を消した
橋の袂から
汚れた
庭球
(
テニスボール
)
を手にした
初老の男がひとり歩いてくる
近づくほどに大きくなる白い
顎鬚
(
あごひげ
)
の顔は
薄ら
哂
(
わら
)
いを浮かべたまま
足音も無く通り過ぎ
長方形の
朧
(
おぼろ
)
な背中は
森の中へ
吸い込まれていった
自由詩
汚れた庭球
Copyright
服部 剛
2007-06-02 20:52:53
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