ささ
氷水蒸流

彼女のささやきは
太古の空に置き忘れた 君の本当のイニシャルであったり
気づかれぬまま 君を愛した風の名であったりする

彼女のささやきは
瞼にそっと置かれたぬくもりであったり
愛撫がすくい損ねた砂であったりする

彼女のささやきは
鏡を通り抜けて 黒い氷を溶かす光であったり
綺麗だという理由で 残像のままにしたイメージであったりする

そんなこと少しも気づかずに
自分はふつうの女だと言い
言い訳のように君を包み
背中に、腹に、足に、唇に、舌に
やわらかな肌ざわりがあり
表にも裏にも奥行きを失い
しだいに
触れるものすべてを
一つの色を分けあう
水にする



自由詩 ささ Copyright 氷水蒸流 2007-06-02 00:08:31
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