先着順の世界
ブルース瀬戸内

さあ先着順でございます。
論理的に言えば、早くしないと失くなります。
せっかく理屈から昇華したばかりの
使い捨ての理念だってそうです。
やっとそれらしさを具現したばかりの
あの渇ききった文明だってそうです。
的確を誇れば、先着から漏れても
あなたは何も失いません。
先着できたかもしれぬ可能性を除いては
悲しくも嬉しいほどに何一つです。


さあ先着順でございます。
明晰に言えば、早くしないと失くなります。
この固着させてしまったがゆえに
妙に心地の良い慣習だってそうです。
あの遠くにあるからこそ美しい
“理想化された”理想だってそうです。
曖昧から眼を背ければ、先着から漏れても
あなたは何も失いません。
先着の栄に浴すことのできた可能性を除いては
はかなくも実感を伴いながら何一つです。

それでもか、ということです。
それでもなおなのか、ということです。

さあ先着順でございます。
これこそが世界です。


自由詩 先着順の世界 Copyright ブルース瀬戸内 2007-06-02 00:05:00
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