秘密基地
はじめ
今の時間から親友が集まる木の上の秘密基地へ行く
夜も更けて満天の星空が顔を出している 月の時計が僕をウキウキさせる
濃密な暗闇は景色に馴染んでいて リュックを担いで夜道を全速力で走る
僕達二人がこつこつ半年をかけて造った秘密基地は街を見下ろす山の頂上にある 巨大な木に登って秘密基地に着くと僕は秘密の合い言葉を言ってドアを開けてもらう 街の明かりが後ろめたい気持ちを胸の辺りにまで上げてくる でもそんなのは払いのけて僕達はトランプに熱中したり僕の好きな子のことで盛り上がったりする
親友は学校に馴染めないらしくいつも僕と二人っきりである 僕には他に友達がいたが 片時も彼のことを忘れたことが無く 友達の誘いも断って彼と一緒にいる
彼には両親がいない 交通事故で彼だけが生き残ったのだ その為暗い性格になったのだ 今は母方の祖母と一緒に生活している
僕が彼と仲良くなったきっかけは彼が街の天文台の天体観測クラブに入っていてそこで出会ってその星に対する真剣さに心惹かれてもっと彼のことを知りたいと思ったからである 最初彼はあまり僕に心を開いてくれなかったが次第に僕に話しかけてくれるようになったりした そしてとうとう二人だけの秘密基地を造るまでに仲良くなった この場所も彼が両親とよく星を見に来た場所だった 彼は僕に心を全て打ち明け そしてこの場所で涙した
僕達はお菓子を食べながら比較的時を満喫すると 屋根に上がって天体望遠鏡で空を眺めた 冷たい風が僕らの耳を凍り付かせようとする 季節はもうすぐ冬だ 晩秋の星座が宇宙をゆっくり回っている 本当は僕達の地球が回っていることをいつも忘れて観察している 吐く息も白い
彼は見えた星座を事細かくチェックし 家族で祝う最後の誕生日で買ってもらった図鑑と照らし合わせて確認した 僕はその様子を見ていて本当に星が好きなんだなと改めて思う
時刻は既に日付を変えて 街の灯も徐々に少なくなってきた 最後の汽車の汽笛の音が響き渡ると 静寂が急に訪れたような気がした
僕は彼の家に泊まりに行っていることになっている お母さんが彼の家にお詫びの電話を入れていると思うけど彼のおばあちゃんが機転を利かせて上手く言ってくれているだろう 彼は今夜は徹夜で星の観察をするらしい 僕ももちろんそれに付き添うつもりだ
星は夕暮れの空のように神秘的に輝いている 僕は未だにどれがどの星座の一部かまるで分かっていない 僕は彼はまだ幼いのにすごい博学で尊敬している 彼は将来は天文学者になりたいらしい その為に難しい勉強をする為に東京の中学へ進学するという 僕とは小学校でお別れだ 彼は僕のことは一生忘れないという そして大人になったら必ずちゃんとした立派な天文台で僕に星を見せてくれると約束してくれた
東の空から明るんできてきた 僕達はその方角に向いてじっと空を見つめていた 星達は眩しそうに存在感を薄めていった 星は明日も僕達に夢と希望を見せてくれるだろう