予感
かや

一匹の蜻蛉とんぼ
脚の間をすり抜けて
小さくさざ波立つ水田
暮れ翳り始めた空に
フラミンゴの色の雲

エミール=ガレの作品集を
撫でる指で繰っていた
男のこと

苗のきれいに並ぶ底で
電信柱が震えていて
胸の底がざらりとうずく
わたしは手を繋いでいても
濡れた洗濯物や
乱雑なごみ捨て場や
そんなものばかり気にした

花柄のスカートをまとった
若い女性とすれ違う
横顔は穏やかに
輝いて

美術品のように愛されれば
よかったのかもしれない


彼は去る
同じ道で
今日は羽の長い鳥が
高々と飛んでいる





自由詩 予感 Copyright かや 2007-06-01 20:38:29
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