ノート(呼軌)
木立 悟
はばたく度に
世界は変わる
窓を重ねる
まぶた手のひら
グラス フォーク スプーン ナイフ
午後を切り取る宴の先に
波のように繰り返される
拙い夕べの唱がある
冬に棄てられた蜘蛛の巣が
花の息に紡がれて
幽かに逆立つ産毛とともに
熱の行方とかたちを描く
円をめぐり たなびく伝言
巨きな景を空に浮かばせ
未だ分かれぬさかいめの
上気した胸の高鳴りを聴く
含み ころがし 遊ばせて
口から口へと移る光
熱さに途切れる道の姫たち
ああ ああ ああとつぶやいている
街の謂われにまたたく耳
壁のくちびるを聴いている
見る間に靴を履き替える子ら
もうひとつの帰り道を知っている
波が波のまま姿を失くし
宴の背だけが打ち寄せている
砂の火の花 灯の柱
午後の鏡に立ちつくす
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