記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」 まとめ
虹村 凌
もうそろそろ時効かな。全部書いてしまおうか。
まとめて書いてしまえ。
既に小説らしき記録を書いたのだ。もう問題は無かろう。
***
これから、また、とりとめのない事を書くよ。
高校二年生の頃に始まった、僕とY村君の友人関係。
そして、僕ら共通の友達。
僕はY村君の彼女に惚れてしまったので、
その事を素直に伝えた。
それで、スッキリと終わればよかったのだけれど、
事はそう簡単に終わらず。
僕とY村君は、お互いを利用する形で裏切り、
僕たちは、異常なまでに非現実的な修羅場に突入した。
Y村君の言動には一貫性が無く、
同じ日本語を操る同一民族でありながら、
会話が成立しないと言う状況に陥った。
その彼女のAは、Y村の言動に振り回され、
俺はそれに引きずられた。
3人の間に割って入ったK氏は混乱し、
整理するどころか、話の共通点すら見えなかっただろう。
I氏は一歩退いて見守ると言う、動物的に正しい位置にいた。
YとAの関係は、混乱を極め、俺は感情的に喚き続けた。
俺は誰の話も、忠告も聞いちゃいなかった。
アトピーが一番酷かった頃に、
俺が世界が裏返った瞬間をみた時に、
全ての綺麗事が否定された瞬間を見た時に、
死こそが輝きで、甘美な誘惑で、美しい終焉だと信じてた時、
その全ての瞬間に一緒にいてくれた女を、
どうして愛せずにいられよう。
どうして狂信せずにいられよう。
正当化じゃあるまい。
仕方ないとも言わない。
動物的本能の本に、彼女を。
だって、惚れた女が全てで、それが正しかったんだもの。
それ以外の全てを否定し、拒絶し、
聞き入れず、受け容れず、見向きもしなかった。
そして死ぬ気でいたし、死んでいたっておかしくなかった。
若さ故か、死ぬ事に対して恐怖は無いと思ってた。
俺はY村、もしくは彼の母親を殺す気でいた。
又は、彼らに殺されてしまう覚悟でもいた。
矢張り、死ぬ事に対して、今ほど恐怖はしてなかった。
YはY自身が人間であるとは思っていなかった。
彼は彼自身を神だと思っていた。
今は、Aの4年間に渡る交際の結果、
彼は彼自身を「人間である」と認めたらしい。
ただ、それはつい最近の事であって、
4年前は確実にそう思っていなかった。
つまり、4年前の彼は神であった。
彼はAを抱き、「己の身体が汚れた」と言って吐いたらしい。
今でも、殴ってやりてぇと思うさ(笑
彼は彼自身を、「人間」だとは思っていなかった。
だからこそ、話が通じなかったし、話はこじれた。
また、俺が適当な人間であるが故に、
メール友達、と言う関係でありながらも愛を囁き、
4歳年下の少女を裏切り、傷つけた。
K氏は鬱病持ちの彼女と交際を始め、
我々3人の話を聞くどころではなくなった。
K氏がとった行動は、間違いである。
経験値も、裁ける技量も無いままに、
話の噛み合わない3人の真ん中に飛び込むなんてのは、
グローブすらつけた事の無い書道部員か何かが、
プロボクサー大会優勝者に試合を挑むようなものだ。
ただ、その彼の行動があったからこそ、
衝撃吸収剤的な役割を果たしてくれたからこそ、
死者が出なかったと言えよう。
また、一歩引いた立場から見守る姿勢を維持したI氏にも、
同様の事が言えよう。
Y氏。
君には、異様なカリスマ性があるね。
そして、そのチカラを行使して、性欲を満たすのだね。
ねぇ、それは良くない事だよ。気付いているでしょう。
ねぇ、それはしちゃいけない事なんだよ。
もう君自身の思考回路を解明しようなんて思わない。
だって、君自身にも理解出来ていないのだもの。
ただ、その行為だけは止めなきゃいけないよ。
さもなくば、通報しなきゃいけなくなる。
ねぇ、わかっておくれ。出来る事なら、したくないのだ。
わかるかい?
来月でも、一年後でも、十年後でもいい。
あの事件、事変の真ん中にいたみんなで集まって、
笑って話す事が出来ればいいのに、と思うんだ。
みんなで、何か作る事が出来ればいいのに、と思うんだ。
エッセイ、漫画、映画、舞台、全てが出来るんだ。
テーマは一つしか無い。
みんなクリエイターなんだ。
ねぇ、きっと楽しいから、やろうよ。
俺は待っているよ、どんなに確立が低い事であっても。
俺は老けてしまったね。
完全にロマンチシズムに染まってしまったよ。
これは悪い事じゃないでしょ?(笑
俺は俺の考えを他人に押しつける気は無い。
だけど、他人の考えを押しつけられるのは嫌いだよ。
性欲も、昔みたいにギラギラしてないし。
(セックスの必要性を感じないのだ。
自分で処理出来るし、惚れた女の子と一緒に眠るだけで、
幸せになれるのだから。セックスが嫌いなのかも知れない)
それに、ちょっとした事じゃ、動揺しなくなった。
泣き笑い以外の感動が薄れたみたいだ。
俺が醸し出す妙な落ち着きは、その所為だろうと思う。
老けちまつたカナシミに?
悲しくなんか無いさ。
今年も、まるで作り物みたいに雨が降ったね。
会う日は何時も雨だった。
何時もは持たない傘を、昨日は偶然持って出たんだ。
笑っちまうよなァ!ドラマだね。
昼の祖師谷を歩く、ラバーソールスーツ君とロリータちゃん。
再び男女の友情を、信じてみようと思うよ。
セックスの向こうにしか存在しえないその友情を、ね。
危ういバランスの上にいられるのは、既にセックスしたから。
「セックスしたいけどしたくない」なんて思ってると、
男女の友情なんて成立しないんだぜ!
色々と諦めて、色々と見えてしまったから。
達観してしまったから。
俺は凄い奴だぜ。ありがとう。
感謝してる。
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