薔薇と蝿
服部 剛

 一匹のハエは 
 羽をむしられたまま 
 今日も曇天の街を漂う 

 迷い込んだ森のうちで 
 湿った草の茂みに囲まれ 
 一輪の薔薇が咲いていた 

 開いた唇からこぼれる 
 声無き唄声 

 うっすらと運ばれる 
 風の薫り 

 茎に透きとおってゆく 
 無数の棘 

 ( 羽の無いわたしの背中は 
 ( 遠く置き忘れた熱情に 
 ( もどかしく、うずいた 

 -----そして 

    茂みの闇に咲く薔薇を 
    いつまでも、蝿は眺めていた 
    しなった草の先端にとまり 
    夜風に身を、揺らしながら 








自由詩 薔薇と蝿 Copyright 服部 剛 2007-05-31 01:18:21
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