裸のディナー
村木正成

君が運んできた卵料理を食べながら
僕のそばに腰かけた君の瞳に見入る
夜の闇に車の音が消えてゆくなかで
なぜだか君の表情が変わっていくのがわかった
僕が卵料理をナイフで切り開いてゆくように
君の瞳も切り開かれていった

月が明るく庭を照らすのに比例して
僕たちの影は濃さを増していった

月光のもとなら僕は上手に踊れるだろう
僕はしばし君のもとから離れて
はるかなる地に意識だけ向かう
目の前にいるのはパーティードレスを着た
狐の顔をした女だ
その女が運んできたのは卵料理だった
それでその女が君であるのが分かった
磨き抜かれた皿に見とれていてはいけない
ナルシスのように花に姿を変えるだろう
花だって?

 花の花粉を蝶が巻き取ると
 オルゴールが鳴りだす
 狐の顔した女が
 一つの鍵を差し出す
 みんな持ち場に戻るんだ

僕たちは自由に姿を変えることができる
僕は白身で
君は黄身だったんだ
黄身が運んできた卵料理を食べながら
白身のそばに腰かけた黄身の瞳を見入る


自由詩 裸のディナー Copyright 村木正成 2007-05-30 08:33:52
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