モーツァルト ピアノソナタ kv570 より、第一楽章
美砂
「かたまるな、走れ」って先生の声
ほっとして立ち上がる
さなえちゃんを蹴飛ばしちゃったら
泣いちゃったから
あ、またあの感じ
透明になる感じ
太陽がわたしの体をすけすけにして
なにもどこも、悪いところがない、でも
少しずつ変わってゆくわたしの体
クラスで一番、やせっぽちの
走ると
ふくらみかけた胸に
スカートをつる金具があたって
いたい
ちいさな、ちいさなふくらみだけど
うしろで、ひそひそ笑い
さなえちゃん、またわたしのせいにしてる
そっちがくすぐってくるから
バタバタさせた足が強くあたってしまっただけなのに
やめてって、何度もいったのに、
でも、いいや、
どうせ、また、ひっついてくるんでしょ、
なんにもなかったみたいに
カーブでスピードをあげる
つま先に赤土が吸い付いてくる
ききたくない笑い声も、さなえちゃんの重たそうなおっぱいも、
どんどんはなれてゆく
海の風
気持ちいい
金具があたって、いたいけれど、
もっと早く走れないかな
飛ぶように
束ねた髪がリンリンなる
みんなあんな後ろ
わたしだけ風みたいでしょ
ぜったい、だれにも、つかまらないから
※自分の生徒のためにかきました。
あくまでもイメージの参考として。
第一楽章はけっこう、つかみどころがなくて弾きにくいです。