抱擁
氷水蒸流

彼女は死んでいる
悲しくはない
はじめから光などなかった 
彼女は死んでいた はじめから
なにもかもが闇だった 
なにもかもが星でも なにもかもが糞でも同じことだ
彼女は包んで欲しいと言う
どこにもないぬくもりを
言葉を知るほど感覚が擦り切れていく
彼女に火を点け 抱いた
行為というよりは落下で 落下というよりは切開のように
闇に腕を回し 星に手を入れ 糞にくちづける
言葉を知るほど感覚が擦り切れていく
死のうとしたのではない
僕は死んでいた はじめから
炎が君のぬくもりであるなら
炎が君のぬくもりであるなら
永遠を錯覚する
祈りだけが在る


自由詩 抱擁 Copyright 氷水蒸流 2007-05-29 18:15:55
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