苦い毒。
結城 森士
何も考えず、廃人の様にベンチに横たわっていると、自分の姿が見えてきた。
あぁ、俺は今、水の中の砂漠で溺れているんだな。
真横に硝子の板があった。俺は硝子の中の魚だった。太陽がまぶしかった。喉が乾いたので涙を舐めてみた。
そうして俺は沈んで行った。
そこからは、地上のあらゆるものがとてもよく見えた。だが、そこが何処だったのか思い出すことが出来なかった。もしかしたら夢の中だったのかもしれない。貴方の夢の中だったのかもしれない。
そう思いながら、ペットボトルの中の水を飲み干す*午前3時。
電話が鳴る。暗くてよく見えない。もう寝なければならない。何故寝ることが出来ないのだろうか。そもそも何故人は眠らなければならないのだろうか。
5月の若葉。文京区の木々が揺れている。
言葉を潰していく。唾を吐くように。