春よ来い
麻生ゆり
1
春一番がやってきても
私は寒さで震えてる
桜の花が咲いたけど
やっぱり吹雪が吹き荒れる
土筆が顔を出したけど
蕗の薹すら眠ってる
つばめが海を越えたけど
未だ雁がここにいる
お玉じゃくしがかえっても
水はやっぱり凍ったまま
蟻が地面を這ってるけど
つぼみはいまだ固かった
日ざしが優しくなったけど
風は冷たく吹いている
2
寒くて寒くて
私はいつだって怖いんだ
止められない痛みをこらえつつ
私の傷は治らない
凍死した魂は
いつだって眠りたい私の邪魔をする
響く音は静かな鎮魂歌
そんなに私を苦しめないで
深海に沈んだ記憶が
二度と甦らぬようにと願う私を
いったい誰が見つめてくれる
いったい誰が許してくれる
果てしない欲望は
そう簡単に押さえきれない
一握の温もりのために
私は今日も嘘を重ねた
3
春になったはずなのに
冬が相変わらずここにいる
いや私が勝手に独りでそう思うだけか
いつになったら春が来るんだろう
はーるよこい はーやくこい