ハリエニシダ 2
「ま」の字

 ハリエニシダ
 遠しといえど難からず

近頃の人間は半袖というものを着ない
だから腕に掻き傷のひとつもないのだと
おじさんは言う
茂みを抜けた岬の荒れ地は
見通しはいいけれど 
とおてえさむい

 ハリエニシダ
 近しといえど易からず

おい坊主、学校はどうした?
おじさん。おじさんは毎日働いて辛くないの
なんだとオレは 
生きることと働くことが もうくっついてしまった
おじさんに難しいこときくな
ヤギの乳運べ、運べば乳一杯だ
会話はそれきりつづかない

ときどき頭がボウとする
学校へ行っても机ゎがたがた鳴るし
じぶんの名前を呼ばれた覚えもない
帰り路で何度も風におさえつけられる
ああ、おじさん
僕たちは腕に掻き傷なんかないし
それを人に見せられもしない

ハリエニシダ
放課後の図書室で
いくら調べてもその項目は見つからなかった
「頑張ったら見つかる」
窓が鳴る
ハリエニシダ
遠い地方なら

きっとありふれた樹木の名まえ


自由詩 ハリエニシダ 2 Copyright 「ま」の字 2007-05-28 21:02:41
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