言い訳
たもつ

道端に表札が突っ立っていた
YAMASITA、とだけあった
YAMASITAさんとはぐれて
困っているようだった
家までの道順を教えてあげたが
わかりにくいところもあったので
いっしょに行くことにした
チャイムを押すと
YAMASITAさんの奥さんが出てきた
この間、新しいのをつけちゃったのよ
そう言って冷えてないトマトを三個押しつけ
ドアを閉めた
山下、と書かれた真新しい表札があった
放っておくわけにもいかず
家に連れて帰った
どうしたものか思案していると
表札はどこからか燃えないゴミ用の袋を持ってきて
自分でその中に入った
本音を言えば捨てられる運命にあることを
どうやって諭すか考えていたのだった
自らの手を汚すことなく
すべてはお望みのとおり
言い訳もいらない
生きていることもまた
命の言い訳に過ぎないのだから
袋の中で表札は大人しく佇んでる
その辺りだけ
人のように懐かしい感じがしている


自由詩 言い訳 Copyright たもつ 2007-05-27 18:01:51
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