夜霧のバイオリン弾き
村木正成

夜霧のなかのバイオリン弾きの
奏でる音はどこかもの悲しい
それは夜霧がそうさせるのか
それともバイオリン弾きが
そのように弾いているのか

グレタ・ガルボは
実はフランス政府の
女スパイだってさ

夜霧のなかに
答えを見出そうとしても
無駄なことだった

夜霧のなかのバイオリン弾きは
街灯に影がくっきり映るのに
その姿を見た人はいないらしい

パン屋の女主人が
スパイ容疑をかけられて
町の広場で銃殺される
好奇心に満ちたヤツらは
それを見に押し寄せる

ぼくはそれをただただ見ていた


自由詩 夜霧のバイオリン弾き Copyright 村木正成 2007-05-27 17:25:00
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