少女の色
なかがわひろか

ちょうど欲しい色を切らしていたから
椅子に腰掛けて本を読んでいる彼に相談した
あいにく僕もその色を持っていない
二人で一緒に探しにいこうか
そう言って近所の公園へ出かけた

私たちは遊具で遊ぶ子どもたちを見ていて
髪の毛をおさげにして
他の子どもたちと鬼ごっこをしている少女に目を留めた
ねえお嬢ちゃん
一緒にお家にいらっしゃい

少女はどういう判断を下していいか思案していたけど
お姉さんはなんだか優しそうだったし
お兄さんはとても力強そうだったから
少女はにこにこしながら家へとついて行った

痛くないからねそう言いながら私は
少女の頭にドリルで大きな穴を開けた
血がどぼどぼと溢れ出てきたから
彼が急いで少女の足を持って
逆さにしてバケツの中に注いでくれた

とっても鮮やかな赤色で
私が思い描いていた色とぴったりだった
私は早速筆に色をつけて
絵の仕上げに入った

私の描いた絵は
今までで一番の傑作になった
どうせなら誰かにもらってもらおうよ
彼がそう言ったから
そうね、と言って
キャンパスを抱えて公園へ戻った

公園では少女のお母さんが
近所の人と手分けして
少女を探していた

私はにこにこしながら
お母さんに
少女の血で描いた絵を
手渡した

(「少女の色」)


自由詩 少女の色 Copyright なかがわひろか 2007-05-27 01:51:22
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