Yに
渡辺亘

Yよ
私のことを
憶えていますか
私は今
こんなに遠いところに
来てしまいました

初めは近くに散歩に行くつもりでした
なのに 私は
三つの平原を越え
七つの山脈を越え
二つの断崖を越え
四つの大きな川を渡りました
Yよ
私の声が聞こえますか

私の旅は
はじめ青春の輝き
見るもの 聴くものすべてが
サンライト・イエロウに染まり
芳しい香りと共にありました
旅路は楽しく
よい人とよい思い出に染まりました

しかしある朝
私の旅路は断崖に阻まれ
道なき道を
嵐を背負って歩かねばなりませんでした
荒れ狂う河も渡りました
更に
天をつく山々を
踏破しなければなりませんでした
吐く息は凍り
一度は死を覚悟しました

旅路の最中
ほかの旅人と知り合うこともできました
いい人も多く
ぬくもりを交換し合ったこともありました
中には盗人もいて
裏切られたこともありましたが。

Yよ
私はもう
こんな所まで
来てしまいました
故郷の空は
遠く
遠く 地平線の彼方です
Yよ
私の声が
聴こえますか
Yよ
私の声が
聴こえますか



自由詩 Yに Copyright 渡辺亘 2007-05-27 00:48:38
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