指先舐め
なかがわひろか
あなたは指さえ舐めさせておけば
それで十分満足するから
私は暇さえあると
あなたに指を舐めさせた
時折私が忙しくて
指を舐めさせてあげられないときは
あなたは自分の指をずっと舐めていた
だけどそのうちあなたの唾液で
指がだんだん溶かされて行って
私の髪を撫でたり
私が気持ちいい事やとにかくいろいろなことができなくなって
使い物にならなくなるから
私は左手の五本の指を
爪から先を鋏でちょん切って
爪は硬いからきれいにはがして
口の中でコロコロと舐めやすいように
やすりで指先を磨いてあなたの口の中に放り込んだ
あなたはとても嬉しそうで
時々私の血が混じるのがいいのか
ずっとずっと舌先で転がしていた
時々間違って
飲み込んでしまうこともあったけど
まだ右手も残っているから
私もあなたも安心だった
私がいないときも
あなたはずっと私の指先たちを舐めていて
ずっとずっと舐めていて
私はやっと
安心して家を空けることができるようになった
(「指先舐め」)