白熊
yo-yo

地下の機械室で
とつぜん白熊が働くことになった
あの北極の白熊である
会社では白熊も雇わなければならない
そのような法改正があったらしい
私の部下として配属された

初対面のとき
イッショウケンメイ ガンバリマス
と白熊は言った

白熊は青い空が怖いので
ビルの上階で働くことはできない
一日じゅう地下室に居る
とくに何か作業をするわけでもない
ときどき冷蔵庫を開けてアイスを食べている
私が入っていくたびに
イッショウケンメイ ガンバリマス
と言って頭をさげる

白熊は帰るところがないので
地下の宿直室で寝泊りしている
たまには夜中に街を徘徊することもあるらしい
それは勤務時間外のことだから
私にはわからない

三か月の試用期間が過ぎた
今でも顔が合うと
イッショウケンメイ ガンバリマス
と言って丁寧に頭をさげる
あいかわらずアイスを食べている
すこし打ち解けて会話ができるようになった

アイスたべる あたまツンとする
ちいさなアナあく
あたま だんだんしろくなる
ちいさなコオリ みえる
ちいさなシマ みえる

あおいソラ あおいウミ こわい
おおきなアナあく
ちいさなコオリ きえる
ちいさなシマ きえる
わたしのクニ しろいクニ

イッショウケンメイ ガンバリマス

白熊がどのようにガンバッテいるのか
私にはよくわからない
白熊の足はいつも濡れている
それもなぜか
私にはよくわからない






自由詩 白熊 Copyright yo-yo 2007-05-25 07:14:50
notebook Home