夜は走る
夕凪ここあ

夜を走る
列車から覗く風景は
何もかも止まっているようで
少しばかり
眠ってしまっても
あしたには
間にあいそうだったから

夜を走る
光の羅列は
枕元を通り過ぎて
ずっと知らない街まで
細い道を辿って
それでも続いていく
夜更かしの少女を
とうに通り過ぎた頃
あ、
とぼんやり呟いて
ひとつ
消えた

夜を走る
風は遠くの海からの
澄ませば
かすかに潮っぽい
だけどそれをしないのは
海のない町だから
夜になると
居場所のない哀しみが
一人歩きしていく
地平も水平もない
路地裏に

夜を走る
蛍の点滅
綺麗すぎる場所では
生きれない
だからここに来たの
あしたの中に
それでも昨日の混じる
そんな矛盾のある場所でなら
どうにか生きられる
呼吸を忘れそうに
なりながら

夜を走る
君はさ
今頃
どこに
辿りついた頃だろう
左から
何番目の星に
端っこのない
天体で
探す

夜を走ることを
急ぎすぎたのだ
と言い聞かす
君はさ
もう
あさってを
一歩も二歩も
踏み進んで
まるで
何事も
なかったかのように
ひとりの
朝を迎えた
昨日

夜に走る
無数の見えないものたち
哀しみ
なみだ
に似ていた
と思う

夜を走ると
君の言葉に
触れた気がした
瞬間
夜が深まるより早く
溢れ出したのは
とめどない
哀しみ
だったから


自由詩 夜は走る Copyright 夕凪ここあ 2007-05-24 23:04:54
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