端末
月夜野

 反転された文字列から入口を探す
 隠された仮想領域のことばを拾いに
 ほの白い闇に明滅する極小級数の記号は
 ところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる
 黒色星雲の配置にならい なぞるカーソル
 の上に立ち現れる闇

 変換されるものと されないものの間で
 蠢いている見えざる手の記憶
 投影された形をさぐる端末の上に
 おぼろげに凝固していく死人の輪郭
 蒼白の顔面に針を突きたて
 開閉動作を不規則に繰り返しながら
 真夜中の回路をしずしずと進んでいく

 見えないことと混乱はつがいのように機能し
 憂いが空間に結ばれて
 彼らの影がむなしく交差する
 異なる心と性の社交場で芽生える愛
 ときに紡がれては距離を一瞬で跨ぎ越し
 抒情はたおやかに語り継がれる

 増設された魂のメモリに
 窓の外 しめやかに雨は降り注ぎ
 深々と更けていく夜のしじまに
 端末は唸りを上げて
 幻を活写する
   
     


自由詩 端末 Copyright 月夜野 2007-05-23 23:47:16
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