海の見える丘にて
服部 剛
背後の空に
烏の群が旋回していた
丘の上の広場で
寄りかかる柵から身を乗り出す
目の前に広がる凪いだ海
正午の日は
無数に
煌く波間の上に
遠くに見える蜃気楼
霞のかかる遥かな都市と
工場のラインに並ぶ
忙しげな無数の手が
今日も息づく都市の
時計の針を動かす
柵から
見下ろす
急な傾斜を埋め尽くす
すすき野原は風に
靡いて
ゆるやかな調べで
晴天をふり仰ぐ
背後で
麦藁帽子をかぶった少女が
幼いふくらはぎを躍らせ
日のあたる白昼の広場で
両手を広げて待つ
父のもとへ
駆けていった