初夏の背中
銀猫


背中が守られている
抱擁でなく
囁きでなく
いつも見えない後ろが
守られて温かい
そんな気がしている

口元が護られている
くちづけでなく
言い付けでなく
冷たい言葉が洩れないように
ため息が誰かを泣かせぬように
不思議な封印がしてある


ここに
ひとりでいる
ひとりでいる
けれど孤独という匂いを
わたしは忘れている

流れている
流れている
身体を循るすべてのものが
きみの方向を指している

風が首すじの髪を
きみに向けてちいさく煽る
五月の微かな初夏に




自由詩 初夏の背中 Copyright 銀猫 2007-05-23 19:58:40
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