アルバム
あveC
何の気なしにそいつを手に取ったのさ
わけなんてありゃしない
そこいらに落ちていたゴミを拾ったような
そんな気軽さ
赤茶色の表紙
そいつはずいぶんふてぶてしい面をしていやがる
まるで鏡に写ったてめぇを見てるみたいだ
むなくそ悪い
捨ててやろうかとも思ったが
なにくそ、こんなやつに何を思うことがある
ちょいと中身を見てやろう
笑い話で終わることさ
一枚、二枚、三枚…
そこにはなんにもありゃしない
どこまでいっても続く白
馬鹿野郎
わかっていたさ
こいつに何にもないことくらい
俺に何にもないことくらい
こいつは俺で、俺はこいつ
思い出がいつまでも残るわけじゃない
見ようとしなかったのなら尚更だ
くやしいわけじゃない
さびしい
おや?最後のページに何かある
アルバムをめくる俺の姿
最後で最初の一ページ
視界が滲んだ
無くなった時間は取り戻せない
でもこれから先は…
俺はそいつを本棚に戻した
立ち上がれ
逃げてばかりの人生さ、酒の肴にもなりゃしねえ
もう後ろを見て歩くのはやめだ
くだらない歌を歌うのもやめだ
走り出せ
「行くわ」と俺は言った、「さようなら」と俺も言った
走り出した、前を向きながら
昨日も見たはずの空はいつもより澄んでいて
俺は笑い出した