「 こんくんこん。 」
PULL.







犬小屋で眠っていると、
きつねのこんに声を掛けられた。

「どうして、
 そんなところで眠っているんだい?。」

ぼくは、
わるいこだから。
そう答えると、
きつねのこんはこう言ったよ。

「きみはわるいこなんかじゃない。
 ほらだって、
 こんなにあたたかい手をして、
 なみだを流す目を持っているじゃないか。」

でも、
お家のみんなは、
ぼくはわるいこだって言うよ。
ぼくがわるいこだから、
みんなけんかして、
みんな仲が悪いんだって、
いつもそうみんな、
ぼくに言うよ。
だから、
ぼくはわるいこだから、
お家じゃなくて、
ここで眠っているの。

そしたら、
きつねのこんは前足で、
ぼくの首輪を外して、
言ったんだ。

「きみが本当にわるいこなら、
 おいらと一緒に、
 夜に行こう。
 夜にはいっぱいわるいこがいて、
 みんないっぱい笑ってる。
 みんなとってもわるいこで、
 みんなおいらの仲間で、
 ともだちさ。」

とも…だち?。

「そう、
 ともだち。
 おいらたちも、
 もうともだちだろ。」

でも、
ぼくがいなくなると、
お家のみんなが心配するかもしれないから…。
そう言うと、
きつねのこんは悲しそうに、
首を横に振ったんだ。

「あれでも…かい。」

振り返ったお家では、
みんなが大声で、
いつものように罵り合って、
またけんかをしていたよ。

「行こう。
 夜へのバスが、
 もうすぐ来るよ。
 おいらの切符をあげる。
 夜への旅は、
 おいらもみんなも、
 一緒。
 おいらたちは夜のこども、
 みんなとってもわるいこで、
 みんな、
 夜のともだちなのさ。」

ぼくはともだちの手を取って、
夜のこどもになった。

最後に、
ひとつだけ、
振り返ってさよならをして、
それから二度と、
振り返らなかったよ。












           了。



自由詩 「 こんくんこん。 」 Copyright PULL. 2007-05-23 09:37:27
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