侵入
たもつ

朝、自転車に侵入された
ちょうど起きようとしているところだった
カロロと卑猥なペダルの音を耳元でさせ
とても恥ずかしかったが
俺は初春のように勃ち
自転車は器用に車輪をたたみ侵入してきたのだ
なんだかとても恥ずかしかったが
侵入されるのは侵入するのとは違った気持ち良さと
そしてやはり恥ずかしかったが
俺に何度も侵入された彼女の
このバカ、と言った理由もわかった気がした
昇天する瞬間、降車ボタンを押すと
ベッドは徐々にスピードを落とし
レストランの前に停まった
壁に有名人のサインや手形が
たくさんかけられたレストランだった
あの時と同じものを、と注文し
あの時と同じものなど何もないのに
俺の体から侵入された痕跡が一筋流れ出す
それは愛にも似ていたが
もうそんなものしか愛せなくなっていた
自転車はすっかり清々しい様子で
カロロ、坂道をくだっていく


自由詩 侵入 Copyright たもつ 2007-05-23 08:36:02
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