5年前のあなたへ/5年後の私より
ななこ

時の流れは 人を弱くする

生れ落ちたときは
精一杯握り締めていた手が
いつしか
力をなくし 藁を掴みすらしなくなっていた

声高に叫んだ
輝かしい未来は
いつしか
金にまみれて 見えなくなっていた

あの人と一緒に眺めた
満天の星が瞬く夜空は
いつしか
出口のないネオン街の迷路を彷徨っていた

あの人との
世界の神々に向けた誓いは
いつしか
崩れ去った墓石の上で読むことができなくなっていた

気がつかないうちに 時は流れるから
気がつかないうちに 私は弱くなる

神様がいるところへどんなに泣き叫んでも
天使は私を指差し 笑いながら言う

なんて愚かな子なんだろう!
あの子が死んだって 時は止まりやしないのに!

後ろを振り返って 過ぎ去った日々の
息が止まるような重圧に 眩暈を覚える

いつだって私は 目を閉じてしまい
膝をついて 項垂れては
いもしない神様の名を 繰り返した

でも もう目を閉じたりしない
これが最後のチャンスだと思って
私は時を 捕まえました


時の流れは 人を弱くし
その中で 人を強くする

過ぎ去った日々は 永遠に戻らない
けれど もう逃げたりしないから

だから 
5年間
待っていてください。


自由詩 5年前のあなたへ/5年後の私より Copyright ななこ 2007-05-22 22:41:40
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