おはよう
水町綜助

地下鉄はきらいだ
そとは暗い

こんな朝に
あいさつを
したいのに

 *

このうすいからだの皮膚に

染みだしたような

うわずみのような感情が潤んで

それを掬おうと
いつも
している

太陽を見る
光を見れば乾くかもわからない
水を見る
海をのめばおもいだすかもわからない
数々の
いま言葉にしないそこにあるものたちの
きめ細かく見えてかさついた肌に
とてもちいさな穴があいているから
覗きこんでしまう

風景写真をみた
アフリカの岬の写真だ
名前は喜望峰
または希望峰

赤みがかった陸地は
切り立って
紺碧を つめたい 水で
洗いたての
うみが
打ち寄せてる
なぜだろう白い 波濤
縁取るような緑が
燃えているけれど
まだ
まだ色が見える

たくさんの
語られない
語られるべき
色彩が数え切れない
境界がないから

生々しいそれは
生臭いにおいを持って
肌のうわずみにかわる

いきものの匂いだ    
いきているにおいだ

一日中強い風に吹かれすぎて迎えた夕暮れ
鼻先にただよう
か弱い
空白の
鼻腔にやわらかくひろがる
汗の名残の
内出血の
血のこごった
こどくの
か弱い
つよいにおいだ

それをかぐ
かいで
すべてのにおいを
塗って
からだじゅうに
夜のうちに
雲が飛ぶ
静かな胸騒ぎのうちに
塗って
そして
からだじゅうで
おはようを言うから
また生まれた朝
どうか手を振り返して



















自由詩 おはよう Copyright 水町綜助 2007-05-22 21:25:08
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