月は渡る
麻生ゆり

その夜の月は
暗闇の中にぽっかりと開いた
白い穴のように
輝いておりました
私は
目を背けることができず
ただただ
見つめておりました
月は
ほんとうにまん丸で
とっかかりがありませんでした
ただただ
光をつき放すのみなのです

せかせかと
向かい風のように
あっという間に過ぎ去っていく人と
月とを一緒に眺めると
その丸い月は
死んでいるように
見えました

つんつんと
針葉樹のように
天を突きさすビル群の
間にうかんだ満月は
いったいどういうわけなのか
生きてるように
見えました


自由詩 月は渡る Copyright 麻生ゆり 2007-05-22 21:03:04
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