ブルー・ノート
佐野権太

路地裏のちび猫は
突入する赤に
踏み出す肢を迷わせる
産み落とされた残り香
ずぶ濡れのステップ

行きずりのハーモニカ犬は
油のしみ込んだ木柱に
鼻先をふがふが押しあてる
かつて高く響いた
指笛の方角

チョーキングする黒い指
音楽が争いをなくすと信じていた頃の
擦り切れたジーンズ
絞りだされる金色の声紋
一番星の境界を震わせる

row row row
ルーズにはみだしても
手放せないものたち
狭い水路を漕いでゆけ

潰れてゆく太陽の叫び
かかとから伸びる水色の影
交ざりあって
溶けてゆけ


自由詩 ブルー・ノート Copyright 佐野権太 2007-05-22 10:51:37
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