現実主義者、日本晴の朝にさえ物思う
松本 卓也

嗚呼 何てよく晴れた朝だ
雲一つ無く透き通った蒼が
彼方まで薄く広がっている
風の囁きが耳に心地よく響き
色とりどりの花が道端で笑っている

ただどんなに空が澄んでいても
どれだけ風が優しくても
例え外出することが有ったとて
精々車での遠出くらいだから
日常に僅かな絵の具をたらすより
たいして記憶にゃ残らない

空の蒼さを賛美してみようが
爽やかな風をありがたがろうが
財布が重くなるでもなく
納期が延びる訳でもない
まぁ悔むほど悲惨ではないけれど
現実に穴が開くほどでも無かろうに

心寂しいと哂われるかもしれんし
つまらぬ生き様だと蔑まれることもあろう
空はこんなにも蒼く
風はこんなにも優しく
花はあんなにも美しく
だのに君は肩の重さに耐えかねて
下を向くしかないのかねって

昨日と今日と明日と
先月と今月と来月と
去年と今年と来年と
前世と今世と来世とでさえ
大して変わっても無かろう

それは多分何も暮らしだけじゃなく
今日の空が蒼いように
昨日の風が冷たかったように
明日には花が枯れているように

変わらない方が気楽なものもある
変わった方が残るものもある
高波の狭間に木の葉が揺れるよう
無邪気な微笑みの裏に潜むエゴのよう
見つかり難い方が見つければ楽しく
平凡であるほど続けるほうが困難で

当たり前のように見えるものの中に
当たり前でないものを差し挟む余地がある
絶対と相対の歯車が順調に回転しだし
いつにも増して捻くれていられる

そんな一日を繰り返し迎えて
時にたまらなく鬱陶しく
時にたまらなく嬉くて
現実を変える機会があると信じつつ
簡単に変えれないと分っていながら
死ぬまで生きる楽しみを噛み締めるのさ



自由詩 現実主義者、日本晴の朝にさえ物思う Copyright 松本 卓也 2007-05-21 21:33:00
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