遅刻の理由
なかがわひろか
学校に遅刻して
どうして遅れたんだと先生に聞かれたので
お母さんが死にましたと嘘の答えをしました
学校が終わったら先生が
うちに来ると言っていたので
私は授業が終わると急いで家に帰って
お母さんを殺しました
お母さんは、慌てふためいている私を見て
どうしたのという顔をしていましたが
事情を話している暇はありませんでした
お母さんは包丁でぶすりと刺すと
何分かして死にました
もうすぐ先生が来てしまうのではないかと
私はひやひやしていたので
その何分かがとても長いように思えました
先生はうちにやってきて
お母さんの死体を見て
これはただ死んだのではなくて
殺されてるんだと言いました
私はまだ小さかったので
死ぬことと殺されることの違いがよく分かっていませんでした
先生は警察に電話すると言いました
ケイサツという言葉がとても怖かったので
私は仕方なく先生も殺しました
(「遅刻の理由」)