墜落カモメ
なかがわひろか

港にカモメが墜落した日
世界が爆発するかのようで
思わず耳を塞いだが
ただぐちゅっと言う音が
波音の間に
渇いて聞こえただけだった

子どもたちはカモメの元へ寄り
奇声を上げたり
にやにやしたり
つついたりして
やがてそれにも飽きて
また各々の遊戯に戻っていった

腐った臭いが漂う港に
カモメの死臭は溶け込んで
ただそこに溶け込んで

カモメの形を象った
雲が追悼の意を示すようで
それは空に浮かんでいて
ただそれは
浮かんでいて

(「墜落カモメ」)


自由詩 墜落カモメ Copyright なかがわひろか 2007-05-20 18:11:39
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