死に際
ゆうさく

初夏の夕焼ブルー
窓から見えるのは
憂鬱色に染め上がった
人の群れ


病室はうなり続ける
おーんおん


咲き誇る雨の花火
パチパチと
たたきつけられ
消えてゆき 雪のよう
すばらしき儚き世界と
おじいちゃんの死に際


病室はうなり続ける
おーんおん


思い出す、
おじいちゃんと
いつか蜜柑を食べた
しわくちゃな笑顔
カンロあめの香り
口の中
得意げに転がし
溶けていった 

おじいちゃんの死に際

いつか溶けてゆく
カンロあめと雪とおじいちゃん
病室の前で僕は立ちすくみ
思い出と一緒に
カンロあめと雪とおじいちゃんを
口で転がしている

周りの気遣い
哀れみの瞳
おじいちゃんの
寂しそうな背中に
ばかでかい針が突き抜けて
茜空へと続いている

これが
死に際なのだろうと思った

カンロあめ
ゆっくり溶けて
きました


自由詩 死に際 Copyright ゆうさく 2007-05-20 00:37:52
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