おてだま
ネクタイ

夕刻が過ぎても
遠くのほうで
夕焼け小焼け、と
歌っている声がきこえるので
カーテンの厚みに
紛れえ、紛れえ、と
こちらも
声には出さずに
歌い返した

遠くのほう
というのは
ほんとうの
遠くじゃないんだよ

毛布のなかにある
トンネルに
ぽつんと
飴玉をいれるようにして
つぶやいたら
もう
眠っている自分がいて
山の
鳥たちの
帰り道が
橙色にそまって
影絵のように
くろくもあって
ちいさな
こどもたちの運ぶ
かごのなかに
お嬢さんがいて
口の中が
橙色にそまって
影絵のように
くろくもあって
紛れえ、紛れえ、と
歌っている
声がきこえた





自由詩 おてだま Copyright ネクタイ 2007-05-19 23:12:01
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