初夏の途中
灯和

始まりはもう何年前になるだろう
彼が必死に歌う姿を眺めた
あの必死さは若さからか
それとももう後には引けないのか
……どっちにしろ僕には関係ないけれど。


ティンカー・ベル 何処にいるんだい
ティンカーベルは実在しない
物語の中の彼女には
この世界は息苦しすぎるんだ。


僕たちが易々と呼吸をしていられるのも、
自分のついた嘘で固められたマスクのおかげさ。


そろそろあれから何年か経つね
あの頃みたいに鴨川沿いに
沢山の納涼床が背伸びをして
たったそれだけで何か思い出しそうだった
だから泣くのを我慢して、少し早い眠りにつこうか
世間ではまだ、初夏と呼ばれる季節だけれど。 


自由詩 初夏の途中 Copyright 灯和 2007-05-19 21:49:28
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