*あしたのわすれもの*
かおる


夏日を更新するはずの五月晴れが連れてきたのは
冬の残滓のような冷たさで
渺々と吹き荒れる毎に世間を震撼させている

鉄板を舞い上げてしまう風は
それでも人を飛翔させたりはせず
降下する緑に包まれるアスファルトが哀しい

ヘルメット入れに仕舞って子を見殺しにしても
赤ちゃんポストの存在を別次元の話だと感じていたのか

そして大黒柱だった父親はいつの間にか
踏み越えていく対象にもならなくなってしまった

エディプスコンプレックスが進化すると少年は
切断してしまった右腕を白くペイントするのかな

人を傷つけるのは卑怯だと言う当たり前の常識は
いったいどの辺りに棚上げされてしまったんだろう

快楽に身を任せ過ぎて苦しみとか痛みとかに目も向けず
越えては行けない境界線が曖昧になっていく

いくらグレーな解決が好きでも
クロしろはっきりさせとかなきゃだめな事もある

いつの間にか規制されていたはずの武器は
隣人のたんすの中に
ひっそりと仕舞われているのかもしれない


自由詩 *あしたのわすれもの* Copyright かおる 2007-05-19 20:15:12
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