まあだだよ、って春のかけあし
貝だったらどうしよう
メッキで金色にぬられたボタンが
雪の中に落ちていた
ボタンの周囲には
動物の足跡が転がっていて
灰色に溶けた雪が
鉄を鳴らす音で雪自身を撹拌していた高音も重低音も抱きしめながら駆け抜けていくから腕が振れなくてバランスがとれない幼顔
何でもいいから本を持ってきてページをめくっていくと金色メッキの軌跡がこびりついているだろう雪の中で魚雷をしようといっても
虫はとっくに冬眠からさめているらしい
動物たちの足跡から発せられる照明装置のような薄っぺらい光が重厚さを持つようになるまでボタンは錆びないでいたいのだって
どこかの魚みたいに
野原は開け放してあるから
走り放題さ
雪が残っているのが北の野原であるとは限らないけど
ヤカンの中で何かが蒸発するまえに
沸騰させたいというのならやっぱり意志が必要
宝探しじゃなかったのかい
昼飯はまだ考えてないんだ、もうひとっ走りしてこよう