午後と迷光
木立 悟




布のむこうから近づく光
同じかたちの虹に割れ
いつか集まり 一羽の蛾となり
風の重さを聴いている


葉と花の舟
水の上の いくつもの空
花ひらく音 ほどく音
ひとつひとつ 空を揺らす


見つめあうもののはざまに響く
忘れられた言葉の笑みが
一度きりのはばたきに
まばゆいかたちをまぶしている


雨を映す屋根から屋根へ
手わたされる結晶の
降りそそぐにおいと色の粒が
鏡のなかへつづいてゆく


花の舟が
枯れながら咲きながら
降り積もる笑みの柱を
まわりつづけている


音が水になり
姿がゆらぎを増してゆくとき
灰を紡ぐむらさきの手に
断たれた波はよみがえる


つぶやきやかけら
確かさに重なる不確かさ
壁に書かれた蔓の言葉を
一羽の蛾となり昇りゆく
















自由詩 午後と迷光 Copyright 木立 悟 2007-05-19 01:49:58
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