赤いクレヨン
なかがわひろか

赤いクレヨンを食べたあの娘は
頭から爪の先まで
真っ赤になった

私は彼女の似顔絵を描いていたので
真っ赤になった彼女を
真っ赤に塗らなければならなかった

ちょうど赤色が無かったので
少し重い彼女の体を逆さにして
頭からキャンパスにこすり付けた

真っ赤な髪の毛が少し邪魔だったけど
いつしかそれも無くなって
真っ赤な頭から
真っ赤な脳みそが出てきて
そうして私の絵は
全部が真っ赤になった

そろそろ部屋の模様替えをしようと思っていたから
ついでに部屋も真っ赤にしようと
彼女の体を部屋中に塗りたくった
彼女は背は高いから
部屋を塗りつくすには十分だった

部屋中が真っ赤になって
ずっと握り締めていた彼女の右足だけが残ったけど
もしかしたらまた使うことがあるかもしれないから
少し大きめの箱に
他のクレヨンと一緒に入れておいた

青、緑、黄、オレンジ
そして真っ赤な
彼女の右足

(「赤いクレヨン」)


自由詩 赤いクレヨン Copyright なかがわひろか 2007-05-19 00:13:34
notebook Home