森ノ潮騒 
服部 剛

空の曇った暗い日に 
ざわめく森の木々に潜む  
五月の怪しい緑の精は 
幹からおぼろな顔を現し
無数の葉を天にひらく 

わたしを囲む森にたたずみ  
ベンチに腰かけると 
唸る潮騒 
風は頬を 
吹き過ぎる 

虚ろな目線でみつめる先に 
森の小道は横切り 
今日もゆるやかに人は流れる 

古びた公衆便所の横に 
一つの塔が立っており 

 からら からら 

太陽色の風車は回る 

何処からか 
蝿の子供は飛んできて 
右手の甲にとまるので

 ふぅっ 

息を吹きかけた 

森の小道の傍らに 
黒い帽子を被った街灯は 
独り寂しく立っており 
人気ひとけの無い夜に 
帽子の下のましろい顔で 
あたりを淡く 
照らすだろう 








自由詩 森ノ潮騒  Copyright 服部 剛 2007-05-18 21:00:02
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