一人物語る悲しみを
さち

説明が出来ない
キッチンの片隅
気付かれないように
涙が流れた

想いは
こぼさないように
シンクの横に
そっと置いたまま
君の夕飯を作った

テレビに目をやりながら
明るい声で話し掛ける君に
当り障りの無い返事をした
想いは
こぼさないように

ほんの少しのきっかけに
不安定な心は転がり落ちて
食器の白が痛くて
キッチンから逃げ出した

見えない穴の中に向かって
  持ちきれなくなった想いを
 何を言ったらいいのか
 どこへ向けたらいいのか
  わからない言葉を
ただ
 君に知られてはならない悲しみを
最後にはいつも
 捨てきれず抱えつづける悲しみを


文字にうつして

引き出しにしまった





自由詩 一人物語る悲しみを Copyright さち 2004-05-07 10:15:10
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