蒼ざめた太陽
結城 森士

毎朝 4時に訪れる新聞配達人の乾いた靴の音が
新聞受けの 錆びた鉄の反射する音が
眩暈となって彼の思考に重なる

今日も黙って去っていき
錆び付いた自転車に乗って
まだ寝ている街を抜けていく
独りの影、細い道の裏通り
錆びついた車輪が鳴っている
自転車の後ろに残る轍には
過去という糸が繋がっている
しかし彼は見ようともしない

気分が高ぶること、低くなることなし
彼の太陽は、常に蒼ざめている

楽しいこと/笑うこと無く
精神はあっても感情は無い
休みの日には影をつれて人ごみの街を歩く
ポケットに手を突っ込んで
精神はあっても感情は無い
麻痺しているだけかも知れない
孤独な犬の精神は
人ごみの中で蒼ざめている

努力をしない人間は
生きていても仕方が無い と
人を憎み、自分を追い詰めて
ぎりぎりで、ぎりぎりのところで
ナイフを自分に突きつけながら生きる

蒼ざめた太陽は、消えることなく彼に圧し掛かる

9月8日、太陽が真上に上がる頃
彼の歩みを認めてくれる者はない
突き付けた茨の棘を許してくれる者もいない
努力をしない人間は生きていても仕方が無い
そう言って、彼は努力だけはして生きてきた
しかし何のために努力してきたのか分からない
人を守ることも、人を許すことも知らない
彼は、自分に突き付けていたナイフを振り回す
過去の明るい太陽や
暖かい両親の愛や
幸せな家庭
幻想だ(嘘だ)
幻想だ(嘘だ)
全て

路の上の真赤な太陽の下を
蒼ざめた犬が駆けていった


自由詩 蒼ざめた太陽 Copyright 結城 森士 2007-05-18 08:35:05
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