ぷるーとちゃん
オオカミ
何をそんなに憎んでいるの。ときかれて
わたしは
めいおうせい
と こたえる
何をしゃべっているのかわからない雑踏で
ぎざぎざに冴えた踵は帰らない
なまえもしらないくせに
ねえなんて気安く声かけないでよ
眼差しを、すくってほしくて
めをつむった
声を、ほどいてほしくて
みみをつぶした
愛妻家を自称するさらりーまんと残業
帰りに、奥さんのすきなモンブランケーキを買って帰らなくては
という彼の背中にキスして 別れた
町中のケーキ屋が今すぐ閉まってしまえばいいのにとおもった
ああ愛すべきフライドポテト氏よ
どうかわたしの淫らな口をふさいでしまってください
詰め込む咽喉の奥の奥に色褪せてゆくキネマ
今日のタイトルは「幸福なファーストフード!」だ
めいおうせい
と こたえたわたしを茶化して
いじわるそうなホストが
ぷるーとちゃんこんばんわんわん
とか言った
うそ
あのひと、
ほんとうはやさしかったかもしれない
ここは痛いくらいキラキラしていて
なにもかも捨てたい気分になる
詩をかくことも 歌をうたうことも
ピアッシングするみたいに ただそれだけ。とおもった。
駅のホームにたつと、ここも意外と寒いのだということに気付く
空より高くみえる天井を黒く塗りつぶして
向かいのホームは地平線
そうしてゆっくりと
ゆっくりと はなれていく
わたしは
めいおうせい
いますこし泣くけど
すぐめをあけるから
睫がおもい
これがやさしさとかだったらいい
つぎにめをあけたときには
このくそ寒いホームでばかみたいに凛々しく電車を待とう
だれもなまえなんてしらなくていい
わたしは 帰るのだから