だから決着
秋也
過去にはだれも戻れない
だから、決着をつけよう
女性になった彼女が「やっとかよ」って呆れている
でも少し嬉しそう
だから、わかった
僕はずっと寂しかった
僕はずっと怖かった
あの日がどんな形であれ終わることに
これからが始まっていくことに
世界は胎動していても変わらない
僕らにとってはずっと産まれ落ちない胎児のよう
幾十枚も連写したような静止画像
まるで焼き増し
だから、そこに一羽の鳥を飛ばすようなもの
僕と女性が初めて会って
いつまでも囚われて離れられないこの場所
決着つけるならここしかない
僕の傍らには一人の幼い子が
君は一人
僕らの子じゃないのがすごく悲しい
二人とも何やっていたんだろうね
一人で何痛がっていたんだろうね
だから、強がっていたよね
そろそろ、取り掛かろう
お互いのために
君のこともう何もわからない
それだけほって置いたから
「ごめん、ずっと迷っていた」
でもどんな形であれ、君もでしょ
決着
生き残った方がいなくなった方の事まで受け止めればいい
君はこんなになっても笑っているんだね
でも、わかる
寂しい
だから、嬉しい
決着だ
あの日と君に
あの日からの僕に
一つだけわかるんだ
僕も君も少年と少女のようにゾクゾクしている
だから、笑っている
それでいいと思う
そのまま決着つけよう
「だから、あの時言ったでしょう、一緒に生きよう」って
空耳であって欲しい
こんな時に
景色に鳥を飛ばす
だから、決着
彼女が近付いてくる
僕も前へ前へと歩み寄る
鳥が数羽
殺気に感づき
飛び立つ