恋月 ぴの

携帯はコンパクトに似ている
電車のなかで
そして街角にたたずみ
見つめる先に映っているのは
わたしであったり
わたしの知らないわたしだったり

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ひとときの小さな旅

脚半の紐を締めなおし
次の札所をめざす

あなたからの着信を心待ちにするのは
初夏の窓辺に訪れる
小鳥とのたわむれ
気紛れな
それでいてこころを焦がし

もう終りにしたい

閉じた
わたし自身を
ハンドバッグの奥に仕舞い込む
巡礼の旅路は
結末の無い物語にも似て

満ち潮

ひたひたと
入り江の奥にまで押し寄せる
いらつきとも言えそうな感情の波は
ハンドバッグの奥で
小刻みに震えだす

あなたから

そして
見失いそうなわたしのこころを
取り戻そうと
手探りで
掴み出したのは

白装束を身に纏う
わたし自身の姿であり

結末の無い物語に何かを見いだそうとする
わたし自身の姿でもあり


自由詩Copyright 恋月 ぴの 2007-05-16 23:10:09
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